フィルム、再会、野菜

Natura Classicaというフィルムカメラでたまに写真を撮っている。お金がなかった頃、メルカリで何か売れるものはないかと漁っていたら大学生のときに買ったこのカメラを発見し、調べたら富士フィルムが最後に作った日付を入れられるフィルムカメラだった。5万円くらいで売れると知ってそんなに価値があるなら売らずに使おうと決めた過去の自分を褒めたい。フィルムでわざわざ撮りたい写真をと思うとなかなかシャッターを切る気になれずペースはすごく遅いけど、この5年で4本フィルムが溜まったので重い腰を上げてまとめて現像に出した。そのうち3本はもう製造中止になってしまったNatura 1600で、空港で何度もX線を浴びているし古いしで、あまり期待してなかったけど意外にも綺麗に仕上がって嬉しい。撮った覚えのない懐かしい写真がたくさんあって、過去の自分からのギフトだった。フィルムを現像に出す度に高いと思うけど、返ってくる度にもっとフィルムで撮ろうと必ず思う。あまりにも早くこの世を去ることに決めた若い男の子のことを考えて毎日涙が止まらなかった頃、世界がやたらと美しく見えて、いつもの自分なら撮らない写真を撮っていた記憶があり、それだけはどうしても形に残したいと思っていたので無事写真になって良かった。

 

インスタで新しくオープンしたカフェ情報を見て、良さそうだなと思って行ってみたらなんとオーナーは知り合いだった。昔働いていた職場の前にあるカフェで一番コーヒーを淹れるのが上手なバリスタが独立してオープンしたカフェで、全く知らないで行ったのでお互いびっくりした。大好きだったカフェのオーナーと色々あって絶交して以来、日々の中でカフェへ通う時間がなくなってしまって悲しかったけど、最近また好きだと思えるカフェが増えてきて、さらにここに来てこんな嬉しい再会があるなんて。これからはこのカフェに通おうと思う。サンマルタン運河の近くにあるPerlantというカフェです、行ってみてね。

 

マルシェのいつものスタンドで3月末からあっさり初物の苺が出ていた。5月からじゃなかったんかい。ズッキーニもトマトも出ていて、ごはんを作るのがぐっと楽になった。ズッキーニは厚めに切って、オリーブオイルで焼いて、塩または味噌を付けて食べるんだけど、瑞々しさに泣きたくなるほど美味しくて毎日食べられる。昨日はプチポワを初めてミントバターソースで食べてみたら、口の中に春の爽やかな風がぴゅーぴゅー吹いて、今年一番美味しいで賞をあげたいくらい絶品だった。こんなに美味しい野菜が手軽に買えるなんて、フランスに住んでいて良かったと毎回しみじみ思う。季節が巡ってまた春を喜べること、いつまでも大事にしたい。